これは、カクヨムで連載中の小説『EWIG(エーヴィッヒ)』を、途中からでも追いやすい形にするための“まとめ記事”です。
本作は高校時代に執筆した原稿で完結済、全99話の構成です。
この記事は、第80〜86話の内容を物語の流れが分かる形でまとめています。未読の方はご注意ください。
前回(第74〜79話)のまとめ
第80〜86話のあらすじ
霧に包まれた絶壁の要塞、バトリック山城。ヒスタリク王国最大の貴族アビス侯爵が支配し、六万の兵を擁する難攻不落の城へ、カリュースは単騎で潜入を果たした。かつてイプソス草原で自らを打ち破った猛将カイナーフが駐留する死地へ、彼は「カール従騎兵」と名乗りを上げ、堂々とアビス侯爵の謁見の間へと足を踏み入れる。
謁見の間では、軍師リーディスの恐るべき策謀が牙を剥いた。カリュースは偽の密書を提示し、六大卿ヴィラン公爵がミュアイ市で人質にされる危機を煽る。そこへ、陥落したコッドの砦から逃れてきたザッカートが飛び込み、周辺都市の陥落を報告。アビスは完全に身動きが取れなくなってしまう。幾重にも張り巡らされた策謀の網が、老獪な侯爵の手足を縛り上げたのである。
カリュースはすかさず「ヴィラン公と姫を交換する」という偽の作戦を提案し、自らその実行役に任命される。しかし、姫の部屋へ向かう道中、宿敵カイナーフ将軍に呼び止められた。
「もう一度聞くが、おめぇはカリュースだな?」
──正体を見破られ、小部屋へと連れ込まれたカリュースだったが、カイナーフに敵意はなかった。
彼は腐敗した宮廷の陰謀を嫌悪しており、純真な姫が政治の道具として扱われる現状に憤っていた。
「ここは無粋な兵士たちの溜り場だ。ゴミ捨て場に、花などいらねぇ」
と吐き捨て、カイナーフはカリュースの救出劇を見逃すことを決意する。
カイナーフは、姫が皇帝自身によってヒスタリクへ売られたという衝撃の事実を明かし、この件の裏で糸を引く大宰相ラフューンへの警戒を忠告した。共に国を奪おうと誘うカイナーフの言葉を断りつつも、カリュースはその武骨な将軍の心意気に少なからず感銘を受けるのだった。
去り行く足音と共に、二人の道は再び交わることのない平行線を描き始める。カリュースは複雑な思いを抱きながら、アビスが指示した姫の部屋へと急いだ。
ついに幽閉されたランフォーレ姫のもとへたどり着いたカリュース。見知らぬ騎士の訪問に警戒する侍女ニナに対し、姫はカリュースの澄んだ瞳を見て彼を信じることを決めた。幽閉の至宝は、今、霧の外へと導かれようとしていた。
アビスの命という名目で、カリュースは二人に目隠しを施し、城の外へと連れ出す。背後では、何も知らないアビスと、すべてを承知したカイナーフが見送っていた。
半日以上駆け抜け、霧の牢獄から遠く離れた見晴らしの良い丘の上。カリュースが優しく目隠しを外すと、姫たちの眼下には太陽の光に照らされた美しい都市と、青々とした草原が広がっていた。
霧の牢獄は遥か彼方に霞み、新たな物語の舞台がその全貌を現した。遂に皇女奪還の任は成され、一行は眩い光の中へと歩みを進める。それは新たな希望への一歩であると同時に、さらなる波乱の幕開けでもあった。
第80〜86話の主要な登場人物
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カリュース
従騎兵カールと名乗り、敵地バトリック山城へ単身潜入。軍師の策謀を見事に演じきりアビス侯爵を欺く。宿敵カイナーフに呼び止められるが姫救出は咎められず、ついにランフォーレ姫を救出する。 -
カイナーフ
アビス侯爵の実子であり、かつてカリュースを破ったヒスタリクの猛将。カリュースの正体に気付くが、宮廷の陰謀を嫌悪してあえて救出劇を見逃し、カリュースを自身の覇業に誘う。 -
アビス侯爵
バトリック山城を支配するヒスタリク王国最大の貴族。巧妙な計略と周辺陥落の報告によって政治的に追い詰められ、カリュースの偽の提案を完全に信じ込んでしまう。 -
ザッカート
コッドの砦の司令官。ミュアイ軍の捕虜となった後、命からがら逃亡。アビス侯爵の謁見の間に飛び込み、周辺都市陥落の凶報をもたらして侯爵を動揺させる。 -
ランフォーレ姫
スィークリト帝国の皇女。皇帝の保身のために売られ、幽閉されていた。カリュースの澄んだ瞳を直感で信じ、共に霧の要塞から脱出する。 -
ニナ
ランフォーレ姫に仕える侍女。見知らぬ騎士であるカリュースの突然の訪問に怯えながらも、姫の言葉に従い、共に目隠しをして城からの脱出を図る。
国名・地名・用語
- バトリック山城:巨大な山脈の頂に築かれたヒスタリク王国最大の要塞。アビス侯爵が支配し、六万の兵を擁する。年間を通じて深い霧に包まれており、難攻不落を誇る。
- ヒスタリク王国:アビス侯爵やカイナーフ将軍が属する国家。ラヴァ正教を厚く信仰しており、聖都リザルト=レイヴンや六大卿であるヴィランには手が出せないという事情を持つ。
- スィークリト帝国:カリュースやランフォーレ姫の祖国。皇帝と大宰相ラフューンの保身のための陰謀により、国境侵害の停止と引き換えに姫をヒスタリクへ人質として差し出していた。
- イプソス草原:三年前、若き日のカリュースと猛将カイナーフが激闘を繰り広げた古戦場。カリュースは敗れたものの、カイナーフから好敵手として認められ見逃されている。
個別にエピソードを読む
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第80話 霧の山城 難攻不落の要塞。偽の証書を手に、カリュースは単身その懐へと足を踏み入れる。霧深き要塞の腹中へ、一人の騎士が静かに飲み込まれていく。
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第81話 侯爵の謁見 アビス侯爵との息詰まる対峙。偽りの密書が敵の疑念を揺さぶり、緊張は頂点に達する。張り詰めた空気の中、偽りの証書だけが真実のような顔で鎮座していた。
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第82話 王手の瞬間 次々に届く拠点の陥落報告。リーディスの知略が、巨人の守りを内側から食い破る。幾重にも張り巡らされた策謀の網が、一本ずつ巨人の手足を縛っていくのであった。
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第83話 宿敵との再会 作戦を完遂すべく動くカリュースの前に、因縁の赤毛の男が立ち塞がる。狭き室内に満ちるのは、剣劇よりもなお鋭く重い緊張の糸であった。
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第84話 猛将の美学 陰謀を厭うカイナーフとの密談。交わらぬ信念を抱えたまま、二人の騎士はそれぞれの道へ。去り行く足音と共に、二人の道は再び交わることのない平行線を描き始める。
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第85話 幽閉の至宝 ついにランフォーレ姫のもとへ。偽りの騎士は、彼女の信頼を得て脱出の準備を整える。幽閉の至宝は、今、霧の外へと導かれようとしていた。
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第86話 霧からの解放 霧を抜け、眩い光の下へ。自由を求めた逃避行の末、新たな地平が一行の前に広がる。霧の牢獄は遥か彼方に霞み、新たな物語の舞台がその全貌を現した。

