これは、カクヨムで連載中の小説『EWIG(エーヴィッヒ)』を、途中からでも追いやすい形にするための“まとめ記事”です。
本作は高校時代に執筆した原稿で完結済、全99話の構成です。
この記事は、第60〜66話の内容を物語の流れが分かる形でまとめています。未読の方はご注意ください。
前回(第55〜59話)のまとめ
第60〜66話のあらすじ
スィークリト帝国の皇女ランフォーレ奪還という途方もない目的のため、カリュースとリーディスはかつての激戦地、ミュアイ市へと帰還を果たした。
この地を治める第五代ブラーム大公は、かつてイプソス草原大戦で自らを窮地から救った「無敵の騎士」たちの来訪を歓喜をもって迎え入れる。過去の盟約が、今ここに新たな戦乱の幕を引こうとしていた。
大公城の謁見の間。カリュースは姫奪還のため、ブラーム公に三万の派兵を請う。その無謀とも言える要求に対し、冷徹なる大公の懐刀「黒の軍師」ユロが牙を剥く。だが、ひざまずく「白髪の軍師」リーディスは静かに、そして鮮やかにその盤面をひっくり返した。
ラヴァ正教の重鎮ヴィラン公爵をカードとした人質交換。そして出兵の見返りとして敵地の穀倉地帯を献上しつつ、解放後の市民による自治までをも見据えたリーディスの深謀遠慮は、居並ぶ重鎮たちを感嘆の渦に巻き込む。光と影、白と黒の軍師が静かに火花を散らす中、ミュアイの議会は満場一致で進軍を決定した。
作戦は、戦場全体を使った大がかりな「挟撃」であった。
カリュースは二万の兵を率い、陽動と伏兵のためラムセス市方面へと進発する。見送るリーディスはただ一人ミュアイに残り、数に勝る敵の主力軍を相手に、カリュースが背後を突くまでの「一日」を持ちこたえるという過酷な役目を背負うこととなった。
一方、紅蝶湖の海上には、ミュアイ陥落の野望に燃える敵将ザッカートの姿があった。
荒くれ者の提督ルバードゥルの大艦隊と共に南の岬へ上陸した彼は、若き副官ジャクメルの献策を容れ、主力一万の兵をすべて投じた「半弧隊形」での包囲殲滅戦を決断する。自らの圧倒的な兵力と勝利を信じて疑わないザッカートの目には、背後に迫るカリュースの影など微塵も映っていなかった。
そして開戦の時。
ミュアイの大公城では、スィークリト帝国 魔導総長ラトルが残した遠見の巨大鏡「天の目」が戦場の赤と青の軍勢を映し出していた。数で押し潰そうと半弧を描いて迫るザッカート軍に対し、リーディスが下した指示は、敵と全く同じ「半弧隊形」での激突であった。
大地を揺るがす咆哮と共に両軍は激突する。しかし、前線は異様な膠着状態に陥る。
敵を包囲しようとするザッカート軍の両翼は、同隊形をとるミュアイ軍に完全に防がれ、一歩も前へ進むことができない。苛立ちを募らせるザッカートと、血みどろの激戦を繰り広げる前線の傭兵たち。
動かない戦場。それこそが、白髪の軍師が盤上に描いた緻密な罠であった。
力と力が拮抗する死地の果てで、挟撃の刃が振り下ろされる決定的な瞬間が、静かに研ぎ澄まされていく。
第60〜66話の主要な登場人物
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カリュース
スィークリト帝国の中騎将。ランフォーレ姫を救出するため、かつて窮地を救ったブラーム大公の元を訪れる。二万の兵を率い、ラムセス市への陽動と伏兵の任に就く。 -
リーディス
カリュースの相棒である「白髪の軍師」。ヴィラン公爵と手を結んだ奇策を立案し、自らはミュアイ防衛の指揮を執る。敵軍を戦場に釘付けにする恐るべき罠を張る。 -
ブラーム大公
第五代ブラーム大公。立憲君主制を敷き、民衆と議会の支持を集める名君。過去の恩義からカリュースの途方もない要請を快諾し、三万の兵を貸し与える。 -
ユロ
ブラーム公に仕える冷徹な「黒の軍師」。リーディスに激しい対抗心を燃やすが、その神算鬼謀の前に自身の策が劣ることを認めざるを得ず、深い嫉妬を抱く。 -
ダーマンテ
ブラーム大公の配下である指揮官。ぎこちない機械的な敬礼が特徴。カリュースと共にラムセス市攻略の別働隊として出陣する。 -
ザッカート
ミュアイ陥落の野望に燃える敵将。半弧隊形で一気に包囲殲滅を図るが、リーディスの罠にハマり、動かない戦場で苛立ちと焦りを募らせていく。 -
ジャクメル
ザッカートの副官。リーディスが送り込んだ諜者(ハースランド)であり、ザッカートをミュアイ侵攻へと誘導する。 -
ルブルック
ザッカート軍の副司令官。メーマック市の陸軍一万を指揮する生真面目な文官肌の騎士。膠着する戦場の異変に気付き、疑念を抱き始める。 -
ファドーツ
ザッカートの脱獄を手引きした傭兵。ジャクメルと共にザッカート軍に同行し、最前線でミュアイ軍との戦いに参戦する。
国名・地名・用語
- ミュアイ市:アラク海峡の西の出口を押さえる、軍事上の最重要都市。ブラーム大公の拠点であり、ザッカートの大軍を迎え撃つ主戦場となった。
- ブラーム公領:スィークリト国王との盟約により成立した大貴族の領土。五代目の現大公により議会が設置され、「君臨すれども統治せず」の立憲君主制が機能している。
- イプソス草原大戦:二年前にアビス侯爵がミュアイ市に侵攻して勃発した戦い。デスとカリュースがブラーム公を窮地から救い、「無敵の騎士」と呼ばれる契機となった。
- バトリック山城:強国ヒスタリクの重鎮、アビス侯爵の居城。ランフォーレ姫が軟禁されており、常時六万以上の兵力を擁する要塞。
- ラムセス市・メーマック市:リーディスが三万の兵を借りる見返りとして、ヒスタリク最大の穀倉地帯と共にブラーム公への献上を約束した都市。ラムセス市は市民の自治を条件とした。
- 紅蝶湖(こうちょうのうみ):赤道より少し北に位置する穏やかな湖(海)。メーマック市から出港したザッカート軍の艦隊百五十隻が、ミュアイ包囲に向けて進軍した。
個別にエピソードを読む
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第60話 盟約の地 ミュアイ 姫奪還を期し、無敵の騎士達はかつて窮地を救ったブラーム大公の元へ。盟約の地で、新たな戦いの幕が今まさに上がろうとしていた。
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第61話 英雄の来訪 門を開けさせたカリュース達は、大公との謁見で途方もない願いを口にする。英雄の来訪は、静かなミュアイ市に確かな波紋を残した。
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第62話 白と黒の軍師 激しい詰問に対し、リーディスはヴィラン公爵を利用する奇策を解き明かす。驚愕に揺れる広間に、白き軍師の冷静な声だけが静かに響き渡る。
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第63話 軍師の一手 満場一致で派兵が決定。己の敗北を悟ったユロは、去り際に怨嗟の声を遺す。英雄への賞賛は、同時に悪魔の心に消えぬ嫉妬の火を灯していた。
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第64話 ザッカートの野望 挟撃へ軍が進発した頃、野心に燃えるザッカートの大艦隊が上陸を果たす。迫りくる敵艦の群れ。平和な岬に、戦火の足音がひたひたと近づく。
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第65話 半弧の罠 主力全軍で半弧隊形を敷き、ミュアイ陥落の短期決戦を確信するザッカート。勝利を夢見るその瞳には、未だ忍び寄る破滅の影は映っていない。
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第66話 天の目、地の血 迫る敵に対し、リーディスは同じ半弧隊形での激突を命じる。動かない戦場──その均衡こそが、白き軍師が仕掛けた長き罠の始まりであった。


