これは、カクヨムで連載中の小説『EWIG(エーヴィッヒ)』を、途中からでも追いやすい形にするための“まとめ記事”です。
本作は高校時代に執筆した原稿で完結済、全99話の構成です。
この記事は、第55〜59話の内容を物語の流れが分かる形でまとめています。未読の方はご注意ください。
前回(第45〜54話)のまとめ
第55〜59話のあらすじ
ヴィラン公爵らがラムセス市で革命の火を灯そうとしていた頃、コッドの砦では運命の歯車が静かに、しかし急速に回転を始めていた。司令官ザッカートの厚い信頼を得た若き騎士ジャクメルは、ブラーム大公が治めるミュアイ市攻略という大胆不敵な献策を行う。
「大義のためには多少の犠牲も厭わない」
と言い切る若き騎士の冷徹なまでの軍才に、ザッカートはかつてない高揚感を覚え、直ちにその策を採用することを決断。主力の軍勢を引き連れ、ミュアイへと出陣していった。
ザッカート軍が砦を空にした直後、機を待っていたデス大騎将率いるスィークリト軍五千が、ついにコッドの砦へと牙を剥く。銀色の鎧兜が街道を埋め尽くし、勝利を確信して放たれた矢の雨。
しかし、砦の目前で放たれた矢は、見えない透明な壁に弾かれ空虚な音を立てる。それは副司令官チェンライが展開した、自然の理を歪める強固な魔術障壁であった。
進軍を阻まれ、焦燥に駆られるデスに対し、沈黙を守り続けていた北の魔女ウィフィツィのばばが静かに立ち上がる。
「稚拙な結界よ……」
ばばはカードを操り、一瞬にして天地の理を逆転させることで、鉄壁を誇った魔術を打ち砕いた。
轟音と共に障壁が霧散した刹那、デスとルッカは怒濤の勢いで砦内へと突入を開始する。砦の内部は激しい乱戦の場と化した。ルッカを実の兄のように慕うジプシーの少年ミックもまた、戦場という過酷な現実の中で必死に剣を振るう。
一時は敵の重圧に気圧されそうになるミックだったが、デスから「相手をよく見ろ」と激しい叱咤を受け、ルッカから学んだ型を思い出すことで一人の戦士として踏みとどまった。
スィークリト軍とジプシーたちの猛攻により、砦の防衛線が次々と崩壊していく中、一人自室で水晶を抱えていた副司令官チェンライのもとへ、デスたちがついに到達する。
自尊心とも言うべき術を破られ、絶望の淵にいたチェンライであったが、目の前に現れた北の魔女ウィフィツィの姿に愕然とする。己の術を打ち破ったのが伝説の魔女その人であることを知った彼は、魔術士としての力の差を突きつけられ、天を仰いで静かに降伏を受け入れた。
ついにコッドの砦の頂に、スィークリトの栄光の旗が翻った。かつてどの国も成し遂げられなかった要衝の陥落。これによりレガヌ海峡の制海権はスィークリトの掌中に収まり、白髪の軍師リーディスが描いた壮大な「大芝居」は、二つの難局を鮮やかに解決して幕を閉じた。
凱歌は高く響き渡り、物語はついに、ランフォーレ姫奪還を懸けた最終局面へと加速していく。
第55〜59話の主要な登場人物
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ザッカート
コッドの砦司令官。文人官吏らしい快活な野心家。ジャクメルの献策に乗りミュアイへ出陣するが、その隙を突かれ長年守った牙城を失う。 -

チェンライ
魔術士にして副司令官。魔術による防御障壁でスィークリト軍を阻むも、伝説の魔女ウィフィツィを前に敗北を悟る。最後は潔く矛を収め、捕虜の身となった。 -

ジャクメル
ザッカートの副官に抜擢された十九歳の騎士。冷静沈着な軍略で上官を動かすが、その正体はリーディスの策謀を遂行する「諜者(ハースランド)」である。 -

ファドーツ
ジャクメルに同行する軽薄な言動の「自称」傭兵。ジャクメルと共にザッカートの脱獄を手引きし、コッドの砦へと帰還させる。 -

デス
スィークリト帝国の大騎将。不落の要塞コッドへの総攻撃を指揮し、北の魔女の加護を得て見えない魔術障壁を突破、圧倒的な武勇で砦を陥落させる。 -

ルッカ
スィークリト軍の若き小騎将。先陣を切って砦内へ突入し、兄のように慕うミックを導きながら、難攻不落の要塞攻略の一翼を担った。 -

ウィフィツィのばば
伝説の「北の魔女」。チェンライが展開した強固な魔術障壁を「稚拙」と切り捨て、天地の理を逆転させることで術を破り、帝国の勝利を決定づけた。 -

ミック
ジプシーの少年。ルッカを兄と仰ぎ、死地の中で己の役割と向き合う。デスの叱咤を糧に、過酷な戦場で戦士としての第一歩を踏み出した。
国名・地名・用語
- コッドの砦:ヒスタリク王国が誇る海上の要衝。レガヌ海峡を見下ろし、過去一度も陥落したことのない不落の要塞。ザッカートが司令官を務め、今回の攻略作戦の主戦場となった。
- 軍港ルブラン:イザハード海西部に位置する軍事拠点。ジャクメルの献策により、ミュアイ市攻略のための艦隊を編成し、五千の兵を出港させる起点となった。
- メーマック市:ヒスタリク最大の穀倉地帯を守る要の街。ジャクメルの策では、ここの常駐兵一万を吸い上げ、一気に北上してミュアイ市を包囲する計画が立てられた。
- ミュアイ市:ブラーム大公領の首都。ザッカードはミュアイ市陥落を目指し進軍を開始する。



