これは、カクヨムで連載中の小説『EWIG(エーヴィッヒ)』を、途中からでも追いやすい形にするための“まとめ記事”です。
本作は高校時代に執筆した原稿で完結済、全99話の構成です。
この記事は、第4巻(第60〜79話)の内容を物語の流れが分かる形でまとめています。未読の方はご注意ください。
第4巻(第60〜79話)のあらすじ
皇女ランフォーレ奪還のため、カリュースと軍師リーディスは同盟国であるブラーム大公の治めるミュアイ市を訪れた 。目的は三万の兵を借り受けること 。リーディスは、アビス侯爵から姫を解放させるため、ラヴァウインドの重鎮ヴィラン公を人質交換のカードとして利用するという驚天動地の策を披露する 。
その見事な知謀はブラーム大公を感嘆させたが、同時に大公の側近である「黒き軍師」ユロの心に、決して消えぬ嫉妬の業火を灯すこととなった 。目的のためには犠牲を厭わないユロと、命を救うために策を練るリーディス 。白と黒、対極の天才軍師による静かなる闘いが幕を開ける 。
時を同じくして、ヒスタリク軍のザッカート司令官は、ミュアイ市攻略の軍を起こしていた 。彼の傍らには、深い信頼を寄せる若き騎士ジャクメルの姿があった 。
ミュアイ市に迫るザッカート軍に対し、大公城の遠見の魔術鏡「天の目」越しに戦況を見つめるリーディスは、巧みな陣形操作で徹底した時間稼ぎを行う 。拮抗した戦場は、白髪の軍師が仕掛けた長き罠の始まりに過ぎなかった 。
焦燥に駆られたザッカート軍が隊形を崩したその時、背後から一万五千の兵を率いたカリュースの本軍が牙を剥く 。完全に挟撃され、戦局が絶望へと傾く中、ザッカートの前に立ちはだかったのは他でもないジャクメルであった 。
「我が名はハースランド。スィークリト帝国の中騎兵である!」
最も信頼していた部下の裏切り 。策謀の糸に踊らされていたことを悟ったザッカートは復讐の鬼神と化すが、ルッカ率いる騎兵隊の突破により陣形は完全に分断され、ついに囚われの身となる 。
一方、海上の戦いでは凄惨な地獄絵図が繰り広げられていた 。黒き軍師ユロは、季節特有の巨大な渦と無人艦を組み合わせた独断の卑劣な策を用い、ヒスタリクの海軍百五十隻を湖の底へと葬り去った。
ユロの謀略にもう少し早く気付いていれば惨劇を防げたかもしれない──凄まじい数の命が奪われたことにリーディスは薄暗い部屋で一人涙を流す 。そんな白髪の友の震える肩を、カリュースは優しく抱きとめた 。
陸海にわたるミュアイ防衛戦はスィークリト・ブラーム連合軍の勝利に終わり、別働隊としてラムセス市を解放したヴィラン公も合流を果たす 。大公城には、運命の星々が一堂に会していた 。
しかし、勝利の余韻に浸る彼らに、北の魔女ウィフィツィのばばが不吉な影を落とす 。彼女が引いたタロットカードは、何度切り直しても「死神」の絵柄を示したのだ 。それは、この場に集う誰かの死を告げる、残酷な宣告であった 。
消えぬ不安を振り払うかのように、その夜、一人の男がミュアイ市を旅立つ 。ヒスタリク兵の鎧に身を包んだカリュースは、皇女が囚われるバトリック山城へと、ただ一人、満天の星空の下を駆けていく 。死神が嘲笑う未来の先へ──激動の第五巻へ続く 。
第4巻のエピソード毎のまとめ
第4巻は、以下の3つの区間に分けて読むと流れを掴みやすい構成になっています。
-
【第60〜66話まとめ】白と黒の軍師、半弧の罠 舞台は盟約の地ミュアイへ。姫奪還のため三万の派兵を請うカリュース。白と黒の軍師が火花を散らす中、リーディスは敵軍を戦場に釘付けにする恐るべき「挟撃の罠」を張り巡らす。
-
【第67〜73話まとめ】崩壊の夜、静かなる転換 白髪の軍師リーディスの遅滞戦術と背後からの強襲により、敵将ザッカート軍は完全に挟撃される。海上でも敵艦隊が全滅し圧倒的勝利が迫る中、黒き軍師の陰謀が牙を剥く。
-
【第74-79話まとめ】軍師の涙と死神の啓示 挟撃による大勝の裏で、ユロの非情な策に白き軍師は慟哭する。運命に導かれ集う英雄たちに示されたのは不吉な「死神」のカード。死の予感を背に、カリュースは姫救出へ単騎で夜を駆ける。
第4巻の主要な登場人物
-
カリュース
スィークリト帝国の中騎将。ランフォーレ姫を救出するためブラーム大公の元を訪れ、二万の兵を率いて伏兵の任に就く。ザッカート軍の背後から強襲して挟撃を完成させ、勝利を決定づけた後、涙するリーディスを優しく慰め、姫奪還のため単身アビス侯の居城へ出立する。 -
リーディス
カリュースの相棒である「白髪の軍師」。ヴィラン公爵と手を結ぶ奇策を立案し、自らはミュアイ防衛の指揮を執って敵軍を戦場に釘付けにする。完璧な采配を見せるが、ユロの非情な策による敵海軍全滅に慟哭する。「白の星」としてヴィランとカリュースの運命を引き合わせた張本人であることが判明する。 -
ブラーム大公
第五代ブラーム大公。立憲君主制を敷き、民衆と議会の支持を集める名君。過去の恩義からカリュースの途方もない要請を快諾し、三万の兵を貸し与える。 -
ユロ
ブラーム公に仕える冷徹な「黒の軍師」。リーディスに激しい対抗心を燃やし深い嫉妬を抱く。潮流と大渦を利用した無人特攻船の罠で敵海軍を全滅させ、自身の非情な策を邪魔されぬようリーディスを軟禁して、白髪の軍師を出し抜いたことに悪魔的な喜びを感じている。 -
ダーマンテ
ブラーム大公の配下である指揮官。ぎこちない機械的な敬礼が特徴で、カリュースと共にラムセス市攻略の別働隊として出陣する。 -
ザッカート
ミュアイ陥落の野望に燃える敵将。半弧隊形で一気に包囲殲滅を図るがリーディスの罠にハマり、挟撃により軍を完全に分断され敗亡する。大公城の地下牢に囚われ、自らを欺いたハースランドに対し「裏切り者のジャクメル」と狂気じみた怨嗟の唾を吐きかける。 -
ハースランド(ジャクメル)
ザッカートの副官「ジャクメル」として潜伏していた、リーディスが送り込んだ諜者。ザッカートをミュアイ侵攻へと誘導する。捕虜となったかつての上官から激しい憎悪をぶつけられるが反論せずに甘んじて受け入れ、19歳にして一生消えない「裏切り者」の重い烙印を背負う。 -
ルブルック
ザッカート軍の副司令官。メーマック市の陸軍一万を指揮する生真面目な文官肌の騎士で、膠着する戦場の異変に気付き疑念を抱き始める。 -
ファドーツ
ザッカートの脱獄を手引きした傭兵。ジャクメルと共にザッカート軍に同行し、最前線でミュアイ軍との戦いに参戦する。 -
デス
ザッカート軍の陣形の弱点を見抜き、ルッカの突撃を指示して見事な挟撃網を構築する。 -
ルッカ
デスの戦術眼に応え、千騎の騎兵を率いて「尖頭隊形」で敵陣に突撃する。ザッカート軍の半弧隊形を中央から見事に貫通・分断し、大勝の決定的な起点を作る。 -
ヴィラン公爵
ラムセス市を無傷で解放して大公城へ合流する。ばばの占いにより、自身がカリュースの「天命の星」に惹き寄せられた「紫の星」であることを悟る。 -
ウィフィツィのばば
運命の星々が一堂に会した場で、リーディスの深謀がヴィランを導いたと看破する。姫奪還の未来を占うが、何度切り直しても「死神」を引き、残酷な死の啓示をもたらす。
国名・地名・用語
- ブラーム公領:スィークリト国王との盟約により成立した大貴族の領土。五代目の現大公により議会が設置され、「君臨すれども統治せず」の立憲君主制が機能している。
- ミュアイ市:アラク海峡の西の出口を押さえる、軍事上の最重要都市。ブラーム大公の拠点であり、ザッカートの大軍を迎え撃つ主戦場となった。
- イプソス草原:ザッカート軍一万五千を迎え撃つ主戦場。リーディスが仕掛けた陣形の膠着と、カリュース率いる別働隊の背後からの強襲により、ヒスタリク軍は完全に挟撃される絶望の地となった。
- 紅蝶湖:夕方に水面が真っ赤に染まる巨大な塩湖。黒の軍師ユロが仕掛けた無人艦と「大渦」を利用した非情な罠により、ルバードゥル提督率いる百五十隻の艦隊が全滅した。
- 大公城:ブラーム大公の居城。遠見の魔術鏡「天の目」を通して遠く離れた戦場を見渡すことができる。戦勝後は運命の星々が一堂に会する場となり、地下牢には敗将ザッカートが収監された。
- ラムセス市:ヴィランの巧妙な手回しと市民の協力により、本軍を突入させることなくほぼ無傷で解放された都市。これにより、ミュアイ軍の一部はそのままメーマック市の占拠へと向かった。
- バトリック山脈:次なる標的であるアビス侯の居城がある険しい山脈。ランフォーレ姫が囚われているとされ、ヒスタリク兵に変装したカリュースが単騎で闇夜の中、この地を目指し出立した。
- ウィフィツィのジプシー:北の魔女ウィフィツィのばばが率いる、三日月と太陽の紋章を持つジプシー集団。
個別にエピソードを読む
-
第60話 盟約の地 ミュアイ 姫奪還を期し、無敵の騎士達はかつて窮地を救ったブラーム大公の元へ。盟約の地で、新たな戦いの幕が今まさに上がろうとしていた。
-
第61話 英雄の来訪 門を開けさせたカリュース達は、大公との謁見で途方もない願いを口にする。英雄の来訪は、静かなミュアイ市に確かな波紋を残した。
-
第62話 白と黒の軍師 激しい詰問に対し、リーディスはヴィラン公爵を利用する奇策を解き明かす。驚愕に揺れる広間に、白き軍師の冷静な声だけが静かに響き渡る。
-
第63話 軍師の一手 満場一致で派兵が決定。己の敗北を悟ったユロは、去り際に怨嗟の声を遺す。英雄への賞賛は、同時に悪魔の心に消えぬ嫉妬の火を灯していた。
-
第64話 ザッカートの野望 挟撃へ軍が進発した頃、野心に燃えるザッカートの大艦隊が上陸を果たす。迫りくる敵艦の群れ。平和な岬に、戦火の足音がひたひたと近づく。
-
第65話 半弧の罠 主力全軍で半弧隊形を敷き、ミュアイ陥落の短期決戦を確信するザッカート。勝利を夢見るその瞳には、未だ忍び寄る破滅の影は映っていない。
-
第66話 天の目、地の血 迫る敵に対し、リーディスは同じ半弧隊形での激突を命じる。動かない戦場──その均衡こそが、白き軍師が仕掛けた長き罠の始まりであった。
-
第67話 刃と刃の交錯 ザッカートは焦燥から陣形を「槍の陣」へと変更する。必勝を期したその陣形は、死地への行軍であることを知らぬままであった──
-
第68話 崩れる右翼 ミュアイ軍は右翼へ集中攻撃を仕掛け、ザッカート軍はこれを好機と捉える。優勢に見える戦況の裏で、破滅の歯車は静かに回り続けていた。
-
第69話 消えた輜重 背後を突かれた補給部隊は無血開城し、駆けつけたザッカートは虚無を知る。誰もいない草原に吹く風だけが、愚かなる行軍を静かに嘲笑う。
-
第70話 揺らぐ戦況 陸の戦局に安堵する中、海上の罠に気付いた白き軍師は暗闇へ拉致される。光ある場所が戦場ならば、影ある場所では黒い陰謀が蠢いている。
-
第71話 死神の舞踏会 大渦に飲み込まれ、ヒスタリクの巨大艦隊は湖底へと消えた。淡く輝く月明かりの下、黒き軍師の冷笑だけが不気味に照らし出されていた。
-
第72話 偽りの忠誠 絶望の戦場で照明球が光る時、最も信頼した部下が帝国騎士の正体を明かす。偽りの仮面は砕け散り、若き騎士は真実の姿で闇夜を駆け抜ける。
-
第73話 復讐の鬼神 腹心の裏切りに直面したザッカートは、玉砕覚悟の突撃を帝国軍へと命じる。理性を焼き尽くした鬼神は、破滅への道をただ猛進していく。
-
第74話 勝者の御旗 ルッカの突撃が陣形を割り、見事な挟撃作戦はついに大成功を収めた。戦いは終わった。だが、城内には未だ晴れぬ暗雲が立ち込めている──
-
第75話 軍師の涙 冷酷なユロの卑劣な罠によって、無残にも湖の藻屑と消え去った五千の水兵。白髪の軍師の慟哭は、非情な現実に抗う優しき魂の叫びであった。
-
第76話 消えぬ烙印 地下牢で捕虜となったザッカートから凄絶な憎悪を浴び、裏切り者の烙印を背負って歩む若き騎士ハースランド。最後に残るのは、策か力か──
-
第77話 星々の集い 激戦を終え、大公城で再び一堂に会した仲間たち。魔女の占いが星々の因果を紐解く。見えざる糸が、彼らの運命をより強固に結びつけていく。
-
第78話 運命の糸 皇母暗殺未遂に端を発する軍師の策と、娘を遠ざけようとした父の影。偶然か必然か──彼らの出会いは、大いなる意志によって導かれていた。
-
第79話 死神のカード 残酷な死の啓示を背に、単騎で敵地へと闇夜を駆けるカリュース。死神のカードが示す未来。その答えを知るのは、夜空に輝く星々のみである。

