これは、カクヨムで連載中の小説『EWIG(エーヴィッヒ)』を、途中からでも追いやすい形にするための“まとめ記事”です。
本作は高校時代に執筆した原稿で完結済、全99話の構成です。
この記事は、第67〜73話の内容を物語の流れが分かる形でまとめています。未読の方はご注意ください。
前回(第60〜66話)のまとめ
第67〜73話のあらすじ
ヒスタリク軍のザッカート司令官は、ミュアイ市を陥落させるべく一万五千の兵を率いて侵攻を開始する。短期決戦を狙う彼の陣形に対し、白髪の軍師リーディスはあえて同じ陣形をぶつけて戦線を膠着させる。すべては、別働隊のカリュース軍が背後に回り込むまでの「時間稼ぎ」であった。
焦燥に駆られたザッカートは「槍の陣」へと陣形を変えて猛攻を仕掛けるが、手薄になった後方にカリュース軍が到着。無防備な補給部隊は無血開城して降伏し、ヒスタリク軍は完全に挟撃される絶望的な状況に陥る。
勝利の歓喜が近づく大公城の観戦室で、ただ一人、黒き軍師ユロの口元には悪魔的な冷笑が浮かんでいた。彼が密かに放った非情なる策により、巨大な魔術鏡「天の目」に映る海上の軍勢が不自然な動きを見せ始める。
その狂気の罠にいち早く勘付いたリーディスは、顔色を変えて大公へ凶報を告げようとした。だが次の瞬間、背後から忍び寄った黒衣の兵士によって力ずくで口を塞がれてしまう。皆の目が陸の戦況に釘付けになっているその死角で、白髪の軍師は声なき悲痛な叫びを上げながら、深い暗闇の中へと引きずり込まれていった。
白髪の軍師が消えた直後、紅蝶湖の海上で凄惨な死神の舞踏会が幕を開ける。ユロの張り巡らせた冷酷無比な罠により、ルバードゥル提督率いる百五十隻の大艦隊は、突如岬に出現した死の巨大渦へと誘導された。
黒き軍師の悪魔的な策は、強烈な潮流の中で船を次々と激突させ、海の男たちの悲鳴をあざ笑うかのように、ヒスタリクが誇る海軍を湖の底へと無慈悲に葬り去ったのである。
一方、陸上の前線。闇神ウォルが支配する暗夜の戦場で、退路を断たれ絶望の淵で剣戟を響かせるザッカート軍の頭上に、突如として夜を真昼の如く照らし出す照明球が打ち上がった。
まばゆい光の海から現れた無傷のスィークリト帝国軍を前に、ザッカートが己の右腕として最も信頼を寄せていた聡明な部下ジャクメルが、兜を脱ぎ捨て剣を抜き放つ。彼の正体は、ザッカートを罠に嵌めるため潜伏していたスィークリト帝国の若き騎士、ハースランドであった。
最も信じていた部下が敵の諜者だったという残酷な真実を突きつけられたザッカートは、司令官としての理性を完全に喪失し復讐の鬼神と化す。彼は残存兵力すべてを投じ、共倒れすら辞さない玉砕覚悟の半弧隊形を敷き、合流したスィークリト軍本陣への決死の突撃を命じた。
迎え撃つデスはこの包囲網を内側から破るべく、ルッカ率いる騎兵千騎に尖頭隊形での突撃を命じ、戦場は血で血を洗う最終局面へと突入していく。戦場で散りゆく鬼神の命運と、闇に消えた白髪の軍師。華々しい勝利の裏で蠢く冷酷な悪意が、交錯する刃の行方を次なる混沌へと引きずり込んでいった。
第67〜73話の主要な登場人物
-

カリュース
一万五千の別働隊を率いてザッカート軍の背後に回り込み、補給部隊を無血降伏させる。ミュアイ軍との挟撃を完成させ、戦局を決定づける。 -

リーディス
ザッカート軍を釘付けにするため、あえて同じ陣形をぶつける遅滞戦術を展開。海上の異変からユロの恐るべき罠に気付くが、その隙を突かれユロの私兵に拉致されてしまう。 -

ブラーム大公
第五代ブラーム大公。立憲君主制を敷き、民衆と議会の支持を集める名君。過去の恩義からカリュースの途方もない要請を快諾し、三万の兵を貸し与える。 -

ユロ
海上の敵艦隊を全滅させるため、紅蝶湖の大渦を利用する悪魔的な罠を発動。さらに大公の死角を突き、目障りなリーディスを私兵を使って暗闇へと拉致する。 -

ザッカート
槍の陣で勝負に出るが完全に挟撃される。最も信頼していたジャクメルの裏切りを知り理性を喪失。復讐の鬼神と化し、玉砕覚悟の突撃を命じる。 -

ジャクメル(ハースランド)
ザッカート軍を破滅的な状況へ追い込んだ後、ついに兜を脱ぎ捨てスィークリト帝国の騎士としての正体を現す。ザッカートを捕らえようと試みるがルブルックに阻まれ、やむなくデスの元に向かう。 -

ルブルック
ザッカート軍の副司令官。背後からの奇襲と崩壊する右翼の対応に追われる。正体を現したジャクメルからザッカートを逃がすなど、最後まで司令官を支えようと奮闘する。 -

ルバードゥル
艦隊を率いて海上を封鎖していたが、ミュアイ海軍の誘導により岬に突如出現した死の大渦へと誘い込まれる。艦隊ごと渦に飲み込まれ、湖の底へと沈んだ。 -

ファドーツ
ジャクメル率いる遊撃部隊として最前線で戦っていたが、正体を現した彼の窮地を救い、共にスィークリト軍の陣営へと合流する。
国名・地名・用語
- ミュアイ市:アラク海峡の西の出口を押さえる、軍事上の最重要都市。ブラーム大公の拠点であり、ザッカートの大軍を迎え撃つ主戦場となった。
- ブラーム公領:スィークリト国王との盟約により成立した大貴族の領土。五代目の現大公により議会が設置され、「君臨すれども統治せず」の立憲君主制が機能している。
- イプソス草原:ザッカート軍一万五千を迎え撃つ主戦場。リーディスが仕掛けた陣形の膠着と、カリュース率いる別働隊の背後からの強襲により、ヒスタリク軍は完全に挟撃される絶望の地となった。
- 紅蝶湖:夕方に水面が真っ赤に染まる巨大な塩湖。特定の季節と時刻の岬にのみ現れる「大渦」を利用したミュアイ海軍の罠により、ルバードゥル提督率いる百五十隻の艦隊が全滅した。
個別にエピソードを読む
-

第67話 刃と刃の交錯 ザッカートは焦燥から陣形を「槍の陣」へと変更する。必勝を期したその陣形は、死地への行軍であることを知らぬままであった── -

第68話 崩れる右翼 ミュアイ軍は右翼へ集中攻撃を仕掛け、ザッカート軍はこれを好機と捉える。優勢に見える戦況の裏で、破滅の歯車は静かに回り続けていた。 -

第69話 消えた輜重 背後を突かれた補給部隊は無血開城し、駆けつけたザッカートは虚無を知る。誰もいない草原に吹く風だけが、愚かなる行軍を静かに嘲笑う。 -

第70話 揺らぐ戦況 陸の戦局に安堵する中、海上の罠に気付いた白き軍師は暗闇へ拉致される。光ある場所が戦場ならば、影ある場所では黒い陰謀が蠢いている。 -

第71話 死神の舞踏会 大渦に飲み込まれ、ヒスタリクの巨大艦隊は湖底へと消えた。淡く輝く月明かりの下、黒き軍師の冷笑だけが不気味に照らし出されていた。 -

第72話 偽りの忠誠 絶望の戦場で照明球が光る時、最も信頼した部下が帝国騎士の正体を明かす。偽りの仮面は砕け散り、若き騎士は真実の姿で闇夜を駆け抜ける。 -

第73話 復讐の鬼神 腹心の裏切りに直面したザッカートは、玉砕覚悟の突撃を帝国軍へと命じる。理性を焼き尽くした鬼神は、破滅への道をただ猛進していく。


