
これは、カクヨムで連載中の小説『EWIG(エーヴィッヒ)』を、途中からでも追いやすい形にするための“まとめ記事”です。
本作は高校時代に執筆した原稿で完結済、全99話の構成です。
本記事は、第6話〜第12話の内容を結末まで含めてまとめています。未読の方はご注意ください。
第6話〜第12話のあらすじ
第6話〜第12話では、物語の視点がスィークリト帝国側から離れ、ラヴァ正教の聖地リザルト=レイヴンを統べる宗教国家ラヴァウインド共和国へ移る。
白い柱が規則正しく並ぶ「白亜の路」は、信仰の栄光を象徴する一方で、教皇の座と六大卿をめぐる静かな権力闘争の気配をも映し出している。正教と新教の長い対立の歴史が背景として横たわり、現代では派閥の均衡がかろうじて保たれているが、その均衡が崩れた瞬間に国の根幹が揺らぐ危うさが漂っている。
その渦中に立つのが、六大卿の一人であり「鬼公爵」と恐れられるラーデンブルク公爵ヴィランだ。
気まぐれで刺々しい態度の奥に、政治の構造を冷徹に読み切る目を持つ彼女のもとへ、フィリッツグール公の使者が訪れ、教皇後継をにらんだ露骨な取り込みが突きつけられる。
ヴィランは不快感を隠さず一蹴するが、派閥争いの勝敗が自分と皇母の動きに収束していく現実は理解しており、いずれ自分が「均衡を崩す鍵」として狙われうることもまた、予感として胸の底に沈んでいく。
そこへ皇母リザルト=レイヴン四世からの召喚が届き、ヴィランは蒼雲宮へ向かう。
質素な部屋で眠る老いた教皇の姿は、宗教的権威の頂点という肩書きを超えて、ただ穏やかな老婦としてそこにあり、ヴィランはその寝顔に言葉にできない情を重ねる。
皇母はヴィランを孫のように慈しみ、ヴィランもまた皇母に対しては棘を収めるが、その静かな再会は、ヴィランの過去を暴く知らせによって破られる。モンカル修道院から「ヴィランを連れて来た人物が現れた」と伝えられ、さらにその人物は宮殿にまで連れて来られていた。
出生の手がかり――それは皇母にとって希望であり、ヴィランにとっては封じ込めてきた痛みそのものだった。
連れて来られた男は、かつて幼いヴィランを屋敷から連れ出し、修道院に預けた者だった。彼は「アルベラの屋敷に来るがよい。我が娘よ」という父の言葉を伝え、ヴィランを案内すると告げる。ヴィランは怒りと侮蔑を抱えながらも、会わなければ終わらない感情に背を押され、アルベラへ向かう。
湖畔の別荘群の一角、名を削られた扉の向こうに残っていたのは、かつての館の空白と静寂であり、そこでヴィランは断片的な幼年期の記憶に呑まれていく。泣き叫ぶ幼い少女、兄の腕の温もり、父の穏やかな声――そして「エミュール」という名。忘れたはずの名が蘇るほどに、過去と現在の境が揺らぎ、彼女が積み上げてきた「鬼公爵」という仮面の下に、捨てられた子としての傷が顔を出す。
しかし再会の場は訪れない。皇母暗殺未遂の報が届き、ヴィランは迷いなく引き返す。
個人の過去よりも、今の立場と責務が彼女を引き戻したのだ。聖地リザルト=レイヴンは事件で騒然とし、臨時警備隊が組まれ、犯人たちは藍の塔へ送られていた。
ヴィランは事件の経過を聞くうちに、あまりに不自然な点に気づく。捕まると分かっていながら寝所へ押し入る理由、そして「皇母を狙った」という筋書きの作為。
もし標的が皇母ではなく自分であるなら、取り調べの場に現れるはずの指揮官──本来の自分──を毒で仕留める算段が成立する。ヴィランはその推理の果てに藍の塔へ駆けるが、間に合わなかった。
指揮官代理のバック中騎将と、その場にいた者たちは毒殺され、皇母暗殺未遂の仮面の下から「ヴィラン暗殺」という真意が露わになる。
事件は未遂では終わらず、狙いが自分に向いている以上、聖地に留まることは皇母や周囲を巻き込む危険を増やすだけだとヴィランは悟る。
そこへ父からの手紙が届き、暗殺の矛先がヴィランにあること、そして身を潜めるべきだという現実的な助言が示される。ヴィランはついに決断する。
皇母のもとを訪れ、「少し旅に出る」と告げ、帰還を誓いながらも、涙を堪える皇母を背に部屋を出る。皇母は「ここがあなたの故郷なのよ」と縋るように言い、ヴィランはその声を胸に刻みながら白亜の路を進む。
こうしてヴィランは、聖地を守るために、そして自らが引き寄せた刃を遠ざけるために、故郷となったリザルト=レイヴンから姿を消す。
派閥の均衡を支えていた鍵が盤上から消えたことで、宗教国家の静かな綱引きは次の局面へ移り、同時に「誰が、何のためにヴィランを消そうとしているのか」という核心が、物語の前面へ迫っていく。
第6話〜第12話の主要な登場人物
- ヴィラン(ラーデンブルク公爵):六大卿の一人。「鬼公爵」。暗殺の標的となり、聖地を去る決断を下す。
- リザルト=レイヴン四世(皇母/教皇):ラヴァ正教の最高指導者。ヴィランを家族のように案じる。
- エレオノール:ヴィランの側近の女騎士。主を現実へ引き戻し支える。
- リューベック:ヴィランの側近の従騎兵。実務面でも護衛面でも主を支える。
- アニンディ:皇母の使者としてヴィランを呼び戻す人物。旧知の縁をつなぐ。
- モンカル修道院からの客人(元執事):ヴィランの父の言葉を運び、アルベラ行きを導く。
- フィリッツグール公ダール:派閥争いの中心人物の一人。ヴィランへの接触を強める。
- バック中騎将:捜査の指揮官代理となり、藍の塔で毒殺される。
- ラールス侯ウィレム:六大卿の一人。別れ際のヴィランとすれ違う。
- サジ=ベルダント伯爵:ヴィランが身を潜める先として名が挙がる人物。
国名・地名・用語
- リザルト=レイヴン:ラヴァ正教の聖地であり政治中枢。白亜の路が象徴的に描かれる。
- 白亜の路:聖地の中央通路。宗教的権威の「光」と政治の「影」を併せ持つ舞台。
- 蒼雲宮:教皇(皇母)の宮。一般の立ち入りが禁じられる中枢。
- 藍の塔:取り調べと拷問の場。毒殺事件の現場となる。
- モンカル修道院:ヴィランが孤児として育てられた修道院。出生の鍵を握る。
- アルベラ:貴族の別荘群がある土地。ヴィランの過去の屋敷が残る。
- ラヴァウインド共和国:ラヴァ正教を中心とする宗教共同体国家。六大卿の合議で統治される。
- 六大卿:共和国の実権を握る六人の枢機卿級の大諸侯。
- ラヴァ正教/ラヴァ新教:同じ神体系を持ちながら分裂した宗派。政治対立の背景でもある。
- 皇母暗殺未遂事件:表向きは教皇襲撃だが、実際はヴィラン暗殺の布石として機能する。


